病気や障害がある人と関わるときの思いやり~家族・友達・恋人が闘病しているときどうすればいい?
自分の周囲の人が、病気になったと知ったら?知り合った人が持病や障がいを抱えていると知ったら?
どんな風に関わったらいいのか、どんな思いやりが本人にとって良いのかを考えると、なかなか難しいですよね。
この記事では、なるべくいろんなケースで役にたつ「病気や障がいを抱えた人を支えたいときの思いやり・どうすればいいのか」についての初歩的なことを、
難病当事者&精神保健福祉士(相談支援の専門職)であるさやが考えてみました!
そこまで深く関わることのない人から人生的に深く関わる人まで、基本として読んでほしい内容です。
進行性の難病で、身体がちょっと不自由な難病カウンセラーです。
19歳で病気が発覚し家族や友人にカミングアウト。その後に出会った人も含め、持病のことを話してさまざまな反応をいただいて本人側として色々考えてきました。
闘病女子部(病気や障がいを抱える女子の団体)を運営した経験や、難しい病気の友だちを支える側の経験もして悩んだことも。
精神保健福祉士資格を持っていて、相談支援とリハビリテーションの専門職でもあります。
- 家族・友人・彼氏・彼女などの身近な人が病気や障がいになった人
- 出会った人に持病や障がいがあると知った人
- 職場や集団のなかで病気や障がいのある人をサポートする役割の人
- 病気・障がいなどを抱える人に関わるボランティアや仕事をしている人
自分の目から見た「大丈夫そう」で判断しない!
よく入院中の人を見舞ったとき、最近状態が悪化したという家族に会ったときなど、「意外と元気そうだったね」なんて言葉が交わされることがありますよね。
「良かった……」というポジティブな意味で言われることも多いこの言葉ですが、本人や身近で関わっている人にしてみたら苦笑してしまうことも。
健康な人が風邪を引いたりちょっとした体調不良に見舞われたりすると「具合悪い~」「痛い~」と周囲の人にアピールするという人も多いのでは?
これが慢性的に具合が悪い人からすると勝手が違ってくることがあります。
気合が入っているとき、テンションが上がっているとき、楽しいとき、緊張しているとき……etc
その瞬間だけちょっと具合の悪さやハンデを引っ込めてパワーを上げられることがあります。
これは怪我の人も、内臓の病気の人も、認知症の人も、精神疾患の人も同じくよくあることです。
人間の脳内には脳内麻薬とも呼ばれるブースターを起こせる物質が沢山あるため、ここぞというときには具合の悪さを忘れられる(抑えられる)ように出来ています。
人と会っているときだけ元気そうにできる。そのあと頑張った分の負担で余計に状態が悪くなる。
これは医療・介護関係者や闘病中の人のなかではもはや常識。
誰だって人前では少し気を張っているものですが、慢性的に具合が悪い人だとこの差が大きくなることが多いです。
とくに永続的な障害や持病などで本人は慣れているという場合では、なおさら周囲の人に困難さを隠すのが上手な場合も多いです。
もう一つ。
健康な人で、とくに身近に具合の悪い人と関わった経験がない人というのは、具合の悪さを見る目がありません。
ちょっと手が震えていること。ちょっと言葉に詰まってしまうこと。一瞬痛そうに顔をしかめること。困った顔をしていること。
こういうことに目が留まらなくてスルーしてしまうことがありがち。
また、医療関係者や普段から見ている人にしかわからないような具合の悪さや困難もあります。
結論。とにかく自分の目から見て「大丈夫そう」と勝手な判断はせず、本人の主張や医療関係者の言葉を尊重しましょう。
なにより、自分が見ている様子より、もっと大変なところが色々あるかもしれないと考えておくのが無難です。
じゃあ、本当の辛さや大変さを把握するにはどうすればいいの?
質問上手になるべし!
健康でふつうの生活を送ってきた人からすると、病気・障害の話題はなんだか「暗い話」「立ち入りづらい話」という印象を持ちやすいですよね。
もちろん、いきなり検査結果について根ほり葉ほり尋ねたり、「こんなことになってしまってどんな気持ち?」なんてダイレクトな質問をぶつけたりするのは配慮が足りないかもしれません。
でも質問するのは大切なことです。
知ってそのまま受け入れることで気持ちに寄り添える
自分はその立場になったことがないからわからない……
そんな思いやりもあって、なかなか踏み入れずに距離を保ってしまうこともあるかもしれませんが、それでも寄り添える方法があります。
質問して気持ちをきいて、ただそのまま受け入れること。
確かに、同じ立場で相手の気持ちがわかるわけではありません。アドバイスもできません。
何も役に立てないように思えても、ただ聴いて知っておくことはこれからも関わっていく上で大切なことなのでは。
病気や障害では、本人も「自分のことはなかなか理解されない……」という孤独感で落ち込んだり卑屈になったりすることは多いです。
そんな中で、知ろうとしてくれることが支えになるのではないでしょうか。
本人が話したくないなら話さなくてもいいということを伝えられれば、質問を躊躇する必要はないとわたしは思います。
- 質問してもいいかどうか?を確認する姿勢は大切。答えなくてもよい雰囲気を出そう。
- まずは知っておくためにきく。それ以上のこと(今後のことを考えたり、役に立とうとしたり)は後にする。
あいづちを打つだけでも十分。黙って聞いているだけでもいい。
相手に寄り添いたい気持ちだけで十分です。
あなたらしく、話を受け止めてあげたら最高の心のサポートですよ!
じゃあ、具体的に役に立ちたいとき、支えたいときはどうする?
必要な配慮や本人の希望をきく
親しい人、力になりたい気持ちが強い人、サポートする自信がある人ほど起きやすいのが、始めから完璧なサポートをしようとしてしまうこと。
こんな状態ならこれをしてあげればいいかも!こんなときにはこうしてあげたい。
色々思いつくのは当然で、その気持ちはもちろん相手にとってはありがたいことなのですが、残念ながら的外れだったり、その気遣いが本人にとって負担になってしまったりすることも。
職場の配慮でも、彼氏/彼女でも、友達関係でも、家族としての支えでも大切なことは、とにかく相手のニーズを把握することです!
何かしようと意気込む前に、これだと決めつける前に、相手に必要なものを知ってサポート体制を整えましょう。
そのときも、なにも専門家ではないので始めからすべて知ろうとしなくても大丈夫!
何が必要なのか、本人にとってもよくわからないことも。
その都度、聞きとっていくこと。困ったら言える関係性にしておくことが大切です。
- ニーズ把握をするときは感情はなるべく出さない。(同情心や心配よりも、現実問題を当たり前のことのような感覚で考えていけば、本人にとっても負担になりにくい)
- 困り事をきいて解決策を考えてあげるのではなく、解決策は本人と一緒に考える。(考えを共有していれば、本人の方からの相談もしやすい。)
- なにか決める前、なにか相手のための行動を起こす前は、話を進めて行動に移すよりも先に必ず「これでいいか?他に必要なことはないか?」の確認をする
- 相手に遠慮させないため、言いづらくさせないためには、必要十分でかつ最低限よりちょっと上くらいのサポートを心がけると丁度よいかも。
本人にとって最適なサポートや、どうするのが正しいかは自分は知らない。
そう自覚して、本人と一緒に考えていくことが最も大切なことなのではないでしょうか。
とはいっても、心配でいてもたってもいられないときもありますよね。
自分のなかの心配や不安と向き合うには
相手が深刻な状態だったり、とても辛そうだったり、自分との関係性に大きく関わるようなことだったりすると、周囲の人にとっても心配や不安で大変ですよね。
自分のサポート役も探そう
本人の方が辛いのに!と抑えつけてストレスを我慢してしまうことや、無意識に心配や不安からくる行動や言動をしてしまうことはお互いにとってよくありません。
誰かのことをサポートするような立場の場合、自分のことはおろそかになってしまいがちですが、自分にとってもストレスがかかる事です。
できれば全く関係のない人に自分の気持ちや相談を聞いてもらえると一番良いでしょう。
そのような相手がいないときは、支える側の人同士で繋がることも大切ですよ。
もし、誰にも相談できないなら、ピアサポートの会や専門家を探すことも視野に入れてみては。
とにかく、ひとりで抱えることはよくありません!
相手の問題は相手の問題として認める
いくら自分が心配しても変えられない部分、役に立たない部分については距離を置くことも必要。
そのためにも、相手のことを受け容れることがなにより役に立ちます。
本人が辛いんじゃないか?大変なんじゃないか?と心配になってしまうときや、本人の人生や生活がこれからどうなってしまうのか不安になってしまうとき。
本人の気持ちや状態がよくわからない状態のままで心配していると、余計な気苦労が増えます。
相手の辛さや問題を知って、自分のなかで一旦受け止めることが大切です。
その上で、相手がどう受け止めていくかや解決していくかは、相手の問題であることと、分けるようにしましょう。
(少なくとも本人に意思決定能力がある場合には本人次第であり、自分の問題ではないと納得すること。)
- 本人の気持ちや感じていることをそのまま聞いて受け入れる。なるべく自分なりの解釈(わからないことを想像したり勝手な判断をしたり)はしないようにする。
- 本人の気持ちや状態をきいて「辛そうだ」「大変そうだ」と思っても、相手の意志を尊重し、自分の考えで無理に役に立とうとしたり、アドバイスしようとしたりしない。
- 本人次第で変わること(サポートが必要なら求める)と、自分の行動次第で変えられること(サポートを受けいれる体制)の仕分けはしっかりする。
もし関係が家族だったり、彼氏/彼女だったり、親しい友人だったりする場合には、このような簡単なことでは済まないところが大きいですが、基本は変わらないと思います。
支える側にとっても楽になれるのが良い思いやり
病気や障がいを抱えた人の周囲の人は、本人が大変だからと保護的になりすぎてしまったり、気を遣い過ぎてしまったりしてしまうことも多いです。
ですが、あくまでも人と人との関係なので、お互いにとって気が楽になるための方法が思いやりというものではないでしょうか。
気を遣い過ぎて疲れている人にとっても、気を遣うことに疲れてしまった人にとっても、この記事がなにかの役に立てばいいなと思います。
あくまでわたしの経験から考えたことなので、もし「ここは間違っていると思う」「こんな思いやりも必要だと思う」などなどご意見があれば、コメント欄やフォームからのご連絡をお待ちしています。
よろしくお願いします!